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【トランスリンクニュース13】
音楽著作権についての雑感

ラヴェルの「ボレロ」の著作権が2016年5月1日に満了したというニュースはまだ記憶に新しい。ラヴェルが亡くなったのが1937年であったので、ほぼ80年も続いたことになる。なぜこんなに長く続いたのであろうか。ラヴェルが亡くなった当時の著作権法によれば、ボレロの著作権が消滅するのは、1988年1月1日であった。しかし、1951年に第2次世界大戦で失われた著作権の利益を回復するための保護期間の延長、いわゆる戦時加算を認める法律が可決され、この間に著作権の存在していた著作物に8年120日という期間延長が認められた。この時点でボレロの著作権が消滅するのは、1996年5月1日となった。
しばらくしてフランスの著名な音楽プロデューサーがラヴェルの出版権を持つ出版社を買収し、その人脈を用いて音楽著作権の期間延長を画策した。これが功を奏し、フランスでは1985年7月音楽作品に70年間の保護期間を認める改正著作権法が採択された。これにより、ボレロの著作権は2016年5月1日まで延長されることになった。
さらに、2005年ラヴェルの相続人たちはさらに保護期間を延長させようとして驚くべき手を打ってくる。それは、ラヴェルのボレロはイダ・ルビンシュタインのバレエのために作曲されたので、そのときの舞台芸術家であるアレキサンドル・ブノワが作曲に協力している。だから、ブノワは共作者であり、保護期間はブノワの死亡(1960年)から算定されるべきであるとして、さらに20年の延長を要求した。仮にこの延長が認められれば、相続人にはさらに200億円以上の著作権料が入ったと言われている。しかし、フランス音楽作家作曲者協会は総会を開き、さすがにこの要求は認めなかった。こうして、ボレロの著作権は2016年5月1日に消滅したのだった。
そもそもラヴェルの著作権料についてはとても不可解なことが起こっている。ここでは詳細は省くが、我々はラヴェルとは全く関係のない第三者に著作権料を支払っていたのである。作曲者とは何ら関係のない人たちが権利を取得し、その権利を行使して私腹を肥やしていく構図は、特許訴訟において発明者と何ら関係のない人たちが特許権を買収し、その権利範囲を拡大解釈して法外な特許料を請求するいわゆるトロール訴訟と同じ構図である。ラヴェルの著作権の詳細については、日本モーリス・ラヴェル友の会の連載企画ドキュメンタリー「誰がラヴェルのボレロを盗んだのか」や、雑誌「発明」2016年12月号の「欧州便り 第17回」内田謙二著を参照してほしい。興味あるストーリーが紹介されている。
このような記事に触れると、著作権の権利についても何らかの制限、例えば著作権の継承が行われるごとに著作権料を制限するとか、創作者の一定の代までは著作権料の権利継承者への還元を認めるが、それ以降は公共の管理団体が管理するなどの方策が必要ではないか考えてしまう。